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デザインに大容量データの時代が到来。JIDA主催:第89回勉強会イベントレポート

2018年10月から、2回シリーズで開催されている公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(以下:JIDA)主催の勉強会、シリーズ後半にあたる第89回勉強会が、去る11月12日(月)に開催されました。
今回のテーマは『Inter Voxel Solution~VOXELマネジメントで広がるデザインの可能性~』です。今回も勉強会の様子を写真とともにご紹介いたします。

◎前回の第88回勉強会『Digital Idea Development』の様子は、こちらからご覧ください。
 →https://www.ksdl.co.jp/2018/10/jida_stdbenkyokai88/

勉強会の会場は、前回に引き続き、東京・大手町の「3×3 Lab Future」コミュニケーションゾーンです。ありがたいことに定員オーバー。前回と連続でご参加いただいた方のほかに、今回のテーマに興味を持ってくださった方からのお申し込みも多数いただきました。


デジタルならではの緻密なデザインワーク

まずはJIDAの山岡様、平川様よりご挨拶をいただきました。今後必須になってくるデジタルデザインについて、勉強会という形で開催するお話をいただき、ケイズデザインラボとしても大変ありがたい場となりました。

近年、デジタルデザインデータが大容量化しているという背景があります。自由度の高いデザインが作成できるようになりましたが、製造にもっていくことが難しい。
そんな背景から、ケイズデザインラボは今回の勉強会のテーマでもある『Inter Voxel Solution』という解決のお手伝いをご提案いたします。この『Inter Voxel Solution』の詳細は、また後ほど。

さて、まずはデザインワークのご紹介です。前回(第88回)でもご登壇いただきました、吉田真也 氏(SHINYA YOSHIDA DESIGN 代表)より、3Dデザインツール活用とパラメトリックデザインの事例についてお話いただきます。

自動車の整備士として工場に勤務していた吉田さん。業務の中で様々な部品に触れ合うことで、モノに向き合い、設計を志すようになったとのこと。
事例紹介では、実に様々なトライアンドエラーを繰り返されている様子が見て取れました。
「依頼から納品までの期間が短い場合は、自分でソフトウェア上で簡易の解析を行います。破壊試験なども公設試で行ったりします」

吉田さんも使用されている3Dツール「Grasshopper」は、3DCADソフト「Rhinoceros」上で動作するプラグインソフトです。従来のCADソフトでは難しい、自由曲面形状をアルゴリズムにより生成が可能です。建築や宝飾品、プロダクトデザイン分野等、広く使用されています。
他にもメッシュ編集ソフトを使用、インプットとして3Dスキャニング、アウトプットとして3Dプリントや、切削加工をされているとのこと。
「自分でなんでもやってしまいます。こんなデザイナーはなかなかいないと思います(笑)」

「アンビルトの女王」という異名をもつ、女性建築家のザハ・ハディド氏も、3DCADを用いたコンピューテーショナルデザインの手法を用い、CADでは難しい(CADで作れても容量が膨大になってしまう)曲線的な形状を作成していたデザイナーの一人です。彼女のデザインは、その異名の通り過去の技術では「アンビルト(建たず)」なデザインでした。
国立競技場のデザインで有名ですが、他にも水の揺らぎを表現した「Liquid Glacial Table」(ザハ・ハディド氏のウェブ作品ページにリンクしています)といった作品があります。
「今まで事例が少なく作成できなかった、対応しきれなかった形状が出てきます」(吉田さん)

今回、弊社スタッフも大変興味深く拝聴したのが「3Dプリントでどんなものが作れるか」のお話でした。
ここで吉田さんから「3D造形の価格算出のアルゴリズムを読み解き、縦横比率、パーツ分量、配置やボリューム感を算出しました」というエピソードが。この努力により、造形コストを最小限に抑えられたそうです…!

吉田さん曰く、3Dプリンターの造形物は一品モノや什器、冶具等に有用とのこと。「3Dプリントするだけでもとても面白いです。金属造形が出始めた頃、とても造形費が安い時期があって。この機会を逃したら無いな、と思って部品をたくさん出しました(笑)」

また、一風変わったGrasshopperの事例が。秩序ができるものは制約が強く、アルゴリズムが適用しやすいといいます。Grasshopperを用いて数値制御を行うことで、デザインをコントロールするデモンストレーションを見せていただきました。
「数学的にいじれるようにしてイメージを作成すると、2.5Dから3Dでコミュニケーションが取れます」

上記画像、吉田さんが作成されたランダムな揺らぎのデザインパターンです。キラキラときらめく、美しいこのデザインは弊社のInter Voxel Solutionの代表例として、サンプル作成にご協力いただいています。
ここからはケイズデザインラボから、『Inter Voxel Solution』のご紹介をいたします。


ボクセルフォーマットを用いたデジタルデザインの可能性

Inter Voxel Solution』は、ボクセルデータを使いこなすためのトータルソリューションプログラムです。プロジェクトのコンサルティングからデータ作成、システム構築まで、「イメージがあるのにデータが作れない」という問題解決のお手伝いをいたします。

さて、前回の勉強会からちょこちょこと登場するキーワード、「ボクセルフォーマット」。どんなフォーマットで、なぜ注目されているのか。ケイズデザインラボのジェネラルマネージャー、横山からご紹介いたします。

昨年頃より、金型や製品へのデジタルデータ上での「加飾」のお問い合わせが増えています。CADでデータを作るには難しい分野でケイズデザインラボがご提案するのが、「ボクセルフォーマット」と、ボクセルを扱う3Dモデラー「Geomagic Freeform」です。

ボクセルとは、粒子の集まりのデータです。点群データの点に質量をもたせた、粒の集合体で構成されているデータが「ボクセルデータ」です。粒の細かさで形状をコントロールするという、従来のCADとはまた考え方の違うモデラーがFreeformです。

点群データが増えると、データ容量も増加します。大容量のデータはCAD化を行うのにも一苦労。重いCADのデータをうまくボクセルでコントロールすることで、様々な加工・アウトプットに適したデータを作成することができます。

ボクセルの細かさがどうデータに影響するのかは、実際に画面を見ながらご案内します。ボクセルが細かいほど、複雑な形状やエッジ、微細な表面形状の凹凸がより精度よく再現されます。ただ、ボクセルの細かさに比例して、データ容量も重くなるので注意が必要です。

「平面形状に落とし込んだ吉田さんのデザインデータをFreeformに読み込み、高さの設定と形状作成を行います」(ケイズデザインラボ テクニカルディレクター遠藤)

Freeform Plusでは金型作成時の「抜き勾配のチェック」を行うことができます。
「青く見えているのがアンダーになっている箇所です。ここを選択し、勾配を与えることでアンダーを処理します」(ケイズデザインラボ エンジニアリングスタッフ小牧)
「制約のせいでデザインが思った形にならない、というジレンマも、Freeformを活用することでデザインを追い込んで作ることができます」(遠藤)

Freeformで作業を行ったデータは、サーフェスとあわせハイブリッドデータを作成。このデータが金型用データとなります。

昨今のコンピュータの性能向上により、データの大容量化は避けて通れない道となってきています。デザインと製造をつなげるためのデータハンドリングのご提案として、Freeform Plusを軸に、Inter Voxel Solutionをご紹介させていただきました。

続いては「コンピューテーショナルデザインの今後」について、ディスカッションを行います。


「デザインには時間とお金がかかるもの」

ディスカッションは、吉田 真也 氏(SHINYA YOSHIDA DESIGN 代表)平川 真紀 氏(有限会社ヒラカワデザインスタジオ代表)、弊社からは加藤、遠藤、横山が参加します。


先ほどのInter Voxel Solutionをよりご覧いただくために、実際に事例として作成した金型と成型品をお持ち致しました。
「金型を見てみたい、というお声も多くいただいているため、最近は金型を背負って巡業しています」(横山)

前半で吉田さんの事例を交えご紹介した、パラメトリカルデザインの手法。今後どうなって行くと思いますか?皆様にご意見をうかがいました。

元大手メーカーの家電・証明器具のデザイナー、現在は独立しデザイン事務所を構える平川さん。
「家電のデザインでは(パラメトリカルなものは)、クライアントに嫌がられてしまう。シボよりも、機能のプラスアルファ」と、プロダクトデザインの流れが早いがために、デザイン提案ではねられてしまうという現状が聞かれました。
「家電業界の方、いらっしゃいましたら、デザイナーに費用と時間を与えてください(笑)」(平川さん)

「いろんな検証を行うと、作成したラインが微妙になってしまう。いかに高速にシミュレーションを行うか」と吉田さん。Grasshopperの有用さを訴えます。
「(設計と)分業することで、もっと早くデザインができる」(吉田さん)
「(セクション間の)繋げ方がわからないだけなんですよね」(横山)
「予算は実はかからないかもしれません」(吉田さん)

「完成品に近いスタディができるツールになる可能性は、ありますか?」弊社の加藤から質問を投げかけます。
「あたりをつける、という方向性はGrasshopperで検証ができます。デザインツールを作り込むことで、気付きを得る時代になるのでは?」と吉田さん。
「コンピュータのレベルが成長しており、車はWEB上でお客さんがシミュレーションできます。」

コンピューテーショナルデザインの強みは、CADで難しい形状を作成できることにあります。テーマに向き不向きはありますが、どんなことがやってみたいか、聞いてみます。

「高機能シボという切り口で、機能的にデザインを加えたい」と平川さん。「表面だけのデザインだと、ただのシボ。今までにない、加飾だけでない使い方を提案したい」
「解析や製造、いろんなプロセスを絡めて、新たな要素が加わることで意味がでてくるのでは?」(吉田さん)
「トポロジー最適化のシミュレーション・検証を組み合わせてやっていく時代になっていくかもしれないですね」(加藤)

最後に、会場に質問を投げかけてみます。
「パラメトリカルデザインを用いてやりたいこと、困っていること、ほか疑問はありますか?」

「先ほどのお話に出ていたザハ・ハディドの水のテーブル。ゆらぎのデザインは、パターンを描いているのでしょうか」

「水のゆらぎのようなデザインは、Grasshopperプラグインの『Kangaroo』という物理シミュレータがあります。コンピュータは揺らぎを作成するのがうまく、出てくる揺らぎのデザイン、歪み方が心地よいんです。人間のコントロールでは知り得ない領域ですね」と回答くださったのは吉田さん。
「ある年のミラノサローネは、水のデザインが多かったんです(笑)。表現力が表層にでてきた」

余談ですが、Rhinocerosのプラグインの名前はGrasshopperからはじまり、Kangaroo、Penguin、Bongo、Flamingo…と動物の名前だらけです。ライセンス管理ツールの名前は「ZOO」。まさに動物園。

「水以外には、どんなデザインが?」(平川さん)
「ボロノイパターンと呼ばれるデザインを立体的にしたものがよく使われています。最終加工をプログラム以外でやっているはず」(吉田さん)

ツールにより作成可能な形が違うことを知っていると、またできることが変わってきます。データをきちんと作成する落とし込みは、先にご紹介いたしましたInter Voxel Solutionで可能となります。実現が難しいと思っていたデザインに、この機会にチャレンジしてみませんか?


この日の勉強会は大変コアなテーマにもかかわらず、勉強会後の懇親会も大変に盛り上がり、皆様会場を後にするのが惜しかったようです。

シリーズ2回にわたり開催した勉強会、お楽しみいただけましたでしょうか。今回の内容が皆様の3Dデータの活用や、デジタルデザインのヒントになれば幸いです。ご来場いただきました皆様ならびに、勉強会の機会をくださったJIDAの皆様、そして会場として使用させていただいた3×3 Lab Futureの皆様。この度はありがとうございました。
「第3回もやりましょう!次はプラグイン勉強会!」という声があがりましたので、実現したら聴講したいものです。(どうでしょうか、JIDAさん)

前回展示した、「Geomagic Freeform」は、本日のテーマの伏線でした。無事に回収できてホッとしております。

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